
現在、難しい局面にある住宅産業に、明るい未来はあるのか?先の読めない住宅業界の明日を識者に訊く。第1回目の本記事では、建設事業者向けの専門誌「日経ホームビルダー」編集長の安達功さんに尋ねてみた。日経ホームビルダーを始め、日経アーキテクチュア、日経コンストラクションなど建設業界誌を数多く手がけてきた安達さんの考える、業界の明日はどっちだ?!
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安達:実際のところ、これまでの建設というのは、竣工時が建築としてのゴールで、その後の経過で生じる問題には大きな関心を払ってこなかった側面があります。
どうせ住宅の価値は遠からず無くなってしまうのだから、土地の価値さえ、それなりに担保できれば、それで良いと考えられていた訳です。
土地神話は、2000年代では既に崩壊していたのではないですか?
安達: 90年代の半ば以降で、既に信頼に足る考え方ではなかったはずですが、2000年以降も新しい価値観が出てこないまま、引きずっていたのが実態だと思います。人が実感することと、実際に起きている現象にはタイムラグがあるものです。
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お話を伺うと、住宅産業は大きく縮小して袋小路に向かっているように感じます。もしかすると、建設に携わる人材は既に飽和しているのでしょうか?
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安達:いや、むしろ足りていないと私は感じています。
これまでのお話しと矛盾しているように感じるのですが・・・
安達:矛盾はしていません。なぜなら、住宅のストック増と長寿命化によって、メンテナンスの必要性が生じるからです。しかし、新築着工をする人材は必要なくなっていくでしょう。
お話はわかります。しかし住宅産業はこれまで手離れの良い、新築着工が中心でした。今後も、同様に期待されてゆくでしょう。一方、メンテナンスは手間ばかりがかかって、収益を上げづらい業務だと思います。時代の要望だからと行って、「メンテナンスの時代だ!リフォームだ!」と取り組んでやっていくことで、業界が消耗戦に入っていくのではないでしょうか? |
例えば、福祉業界のように、必要ではあるけれど、事業として厳しい状況に向かうことにはなりませんか?
安達:確かに、十分な収益を上げられるかどうか、と問われると分りません。難しい部分もあると思います。
現状でも既に空き屋の数は驚くほど増えています。しかしこれらは、メンテンナスや改修、売買など、ほとんど行われず放置されている様子です。
安達:現在の住宅ストック約5,800万戸のうち、約750万戸が空き屋だといわれています。
不動産価格の下落によって良い値が付かないため売るに売れず、メンテナンスして賃貸にするメリットも少ない。税制を考えると、更地にするのもデメリットが大きい。結果、使われない住宅として放置されている。こういった空き屋ですね。
安達:はい。そうした事例が多いようです。
今後は、ますます同様の空き屋が増え続けると想像できますが、これらが放置されているのは、メンテナンスが事業としての魅力に欠ける、ということではないのでしょうか?
安達:そうかも知れません。しかし、設計者や施工者は、そこに手をつけなければ、立ちゆかなくなります。先程「建設産業従事者が足りない」といったのは、こうした住宅ストックを生かすことの出来る技術者が不足しているという意味です。
手を入れれば住宅が評価され、価値が上がり、市場に出回るようになる。そういう循環が必要です。
市場形成が急務といえそうですね。
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安達:いいえ、実際の物件が現れてこなければ、市場は成立しません。住宅の評価基準ができて、取り組む事業者が増える。そして市場形成に至る、そういう流れです。 既に市場形成を促そうとする取り組みは始められています。例えば、国土交通省が取り組むリフォーム瑕疵保険は、昨年10月に施行された住宅瑕疵担保履行法に基づく制度で、一定の検査を受けた物件に対して、リフォーム工事での欠陥がみつかった場合の修理費用をまかなう制度です。しかし、こうした制度や評価基準ばかりが用意されたところで、事例が揃わないことには市場は形成されないのです。 住宅のストック時代に対応した事業者が多く現れてくることに期待します。 |
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なるほど。「メンテンナスや改修によって、住宅の価値向上を促す事業に活路を見出すべきだ」とする考え方は理解できました。施工能力のある工務店は対応していけるでしょうし、既に実践しつつある事業者もあることでしょう。しかし、そうすると設計事務所はどうしたらよいのでしょう?
安達:私は「中古住宅評価の診断などに力を注いでもらえないものか」と考えています。
先程、話題にあった空き屋率ですが、現在、山梨県が全国一で20.1%あります。しかし、地方自治体が推進する「空き屋バンク」制度の担当者に話しを聞いたところ、「空き屋は足りない」という答が返ってきました。週末住宅や移住先の住居として、賃貸を希望する人は多いのですが、空き屋を貸す側が集まらないというのです。空き屋を所有しているにもかかわらず、賃貸に同意せず維持し続ける所有者が多いのです。賃貸経営のノウハウがないことや、見ず知らずの人に貸すことへの抵抗から、思いの外動きが鈍い様子です。
これを解決しようと、自治体が運用サポートなどを含んだ仲介業務に乗り出しました。
こうした、住生活サポートとでもいう取り組みにこそ、建築家や設計者が参加して欲しいと考えています。【参照】JOIN(移住・交流推進機構)
10年後には、住宅産業の構造は大きく変っていると思います。その時は、今と異なる建築家像が必要とされているのではないでしょうか。
次回、第3回は、激増する空き家率と、住宅の飽和状況についてを 検証、紹介します。
(9月15掲載予定)
| 2010/08/01 05:26:33 | 閲覧:171 | コメント:0 |